ニッポンの“音楽と著作権”史を描く、貴重な証言録
1966年にパシフィック音楽出版として設立された現フジパシフィックミュージックの創業55周年を記念し、その社員第一号であり代表取締役会長(出版当時)である朝妻一郎氏が筆を取った1冊。
なんといっても情報量が多い。ラジオ〜テレビへと時代が移りゆく中での音楽の使われ方と著作権のあり方を深く理解し、ビジネスにつなげてきたエピソードが盛りだくさん。
『オールナイトニッポン』のジングルとしてハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスの「ビタースウィート・サンバ」が選ばれた経緯など、有名なのかもしれませんが初めて知りました。
またゲフィン・レコードの話、ロッド・スチュワートやスパイス・ガールズの権利を獲得した話など、ものすごく簡単に触れられる程度ですが、おそらくひとつひとつで章立てて書けるほどエピソードがあるんだろうな、と感じるほどドラマが詰まっている。
日本の音楽の歴史を本で読む際、いろいろなところで朝妻氏の名を見ることがありましたが、こうして本人の言葉で携わってきた仕事を振り返ると、改めて“めっちゃくちゃレジェンド!”と畏敬の念を抱きます……。
そしてビジネスマンとして、学びの姿勢、行動力、運(のように氏は書かれていますが、実際は人を引き寄せる努力や人柄)の大切さが身に沁みる。
加藤和彦、大瀧詠一、おニャン子クラブとの関わりや名曲の誕生秘話、日本の音楽産業黎明期を知る氏だからこそ知る先輩たちの仕事を読み、日本の音楽ビジネスを作り上げたのが、商才に溢れた重度の音楽マニアたちだったことを思い知らされますね。
音楽に関わる仕事をするうえで最も大切なのは、やはり“音楽が誰よりも好き”なことなんだと感じましたよ。
書籍情報
高鳴る心の歌 ヒット曲の伴走者として
著者 | 朝妻一郎 |
判型 | 四六判 |
ページ数 | 320P |
定価(発売当時) | 2,000円(税抜本体価格) |
初版発行日 | 2022年2月28日 |
出版社 | アルテスパブリッシング |
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